PFI(アメリカ・ペットフード協会)

ヒューマン・アンド・アニマル・ボンド “人と動物の絆”

ジョセフ・ウォーレン先生(グリーン・チムニーズ常任理事) 特別インタビュー

ジョセフ・ウォーレン先生「第6回ペットとふれあいシンポジウム」での講演のために来日した、グリーン・チムニーズ常任理事ジョセフ・ウォーレン先生に「ヒューマン・アニマル・ボンド」についてお話しを伺いました。グリーン・チムニーズは1947年ニューヨーク郊外のブリュースターに設立された動物介在療法・動物介在活動を治療プログラムとして実践するアメリカの児童養護施設です。

(P:PFIインタビュアー J:ジョセフ・ウォーレン先生)

<目次>
ヒューマンアニマルボンドについて
動物介在療法、動物介在活動、動物介在教育について
グリーンチムニーズについて
グリーンチムニーズインターンについて
ペットと暮らす上でのアドバイス

●ヒューマンアニマルボンドについて

P:お忙しい中、初来日でのすばらしい講演をありがとうございました。日本では近年「ヒューマン・アニマル・ボンド」という言葉が注目されていますが、「ヒューマン・アニマル・ボンド」とその効用についてお聞かせいただけますか。

グリーンチムニーズJ:ヒューマン・アニマル・ボンドとは“人と動物の絆(きづな)”です。
グリーンチムニーズでは子どもが危機に陥った時や悪い状況にある時、その行動が非常に破たんしてしまっている時、動物との“絆”は子どもの回復力を強化することに繋がるひとつのすばらしいきっかけだと考えています。 子どもがなぜそんなひどい危機的状況に陥っているかは周りのいろいろな条件や環境があると思います。例えば両親が離婚したとか、あるいは何か家の中に精神疾患があるとか、そういうことが子どもを危機的状況にさせることがあります。
でもそこで、動物と子どもの絆が生まれると、たくさんの効用がもたらされます。例えば動物と遊ぶだけでストレスがなくなったり、他の人とは分かち合いたくないようないろいろな気持も動物となら分かち合えたり、動物の無条件の愛なら応えられたり…。 ヒューマン・アニマル・ボンドの注目される効用は、人は動物との絆を通して生き方や生きる強さを身に付けていくことができることです。

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動物介在療法、動物介在活動、動物介在教育について

P:「ヒューマン・アニマル・ボンド」にかかわる活動で、動物介在療法(Animal Assisted Therapy: AAT)、動物介在活動(Animal Assisted Activities: AAA)とはどのようなものでしょうか。

J:動物介在療法(AAT:アニマル・アシスティッド・セラピー)はライセンスを持つ精神科医やソーシャルワーカーによって行われる、動物との関係を生かした治療法です。グリーンチムニーズでは治療の目標を定め、その手段として動物介在療法を行っています。例えば精神科医などが子どもたちと部屋で話をすると、子どもたちは怖がったり、落ち着かなかったりすることがありますが、そばに動物がいると子どもたちは安心して治療を受けることができ、治療の目標達成を迅速化することができます。それが動物介在療法だと考えています。

グリーンチムニーズJ:動物介在活動(AAA:アニマル・アシスティッド・アクティビティー)は、動物を様々な活動に介在させることです。
動物介在活動は楽しく動機づけにもなるので、教師や専門家たちを助けることになります。また、この活動は動物をいつくしむ資質を向上し、人に対しての思いやりの気持ちをもつことにもつながるので、全体としてより良い方向に向かうことのきっかけになると思います。例えば、レクリエーションに行って外でキャンプしたり森の中を走ったりしますが、犬を連れていけばもっと活動が楽しくなります。犬の世話をするなど犬のことに心を砕いたり、犬に負けないように一生懸命走ったり…これによって活動が楽しくなり、定期的に続けることによってより良い活動になっていくと思っています。教室では先生が自分で犬を飼っている場合、訓練を受けて教室に連れてくるように奨励しています。教室に連れてくる場合、ただ犬はおとなしく教室に座っているだけですが、授業中に気が散ったりムードや気分が悪い、態度が悪くなりがちな子どもたちは、犬がいたほうが静かで落ち着いて思いやりを持って授業に出るようになります。集中出来ない子がいたら「犬のそばに座って犬をなでながら本を読みなさい」というように指導をすると、より良い学習環境ができるという傾向があります。

P:動物介在教育(Animal Assisted Education(AAE):アニマル・アシスティッド・エデュケーション)に関してはいかがでしょう?

J:グリーンチムニーズは全ての活動がまとまっているので、たぶん動物介在活動の中に動物介在教育も入ると思います。

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●グリーンチムニーズについて

P:次にグリーン・チムニーズについてお聞かせください。グリーンチムニーズとはどのような学校ですか?

グリーンチムニーズJ:グリーンチムニーズはニューヨーク州から資格認定を受けた、情動的感情障害のある子どもたちを受け入れる特殊学校、特殊学級という性格をもつ施設です。子どもたちに対して早い段階で介入ができるように、学校や地域社会あるいは家庭でうまく適用できずに問題を起こしている子どもたちに対応することが目的です。そういった子どもたちに良い環境を提供し、2年以内に子どもたちが回復し、今までの家庭や学校、地域社会に復帰できるようにすることを目指しています。成功率は80~85%です。
例えばその地区に3,000人の子どもたちがいると大体一人の子どもに問題等がありますが、資格を満たせばグリーンチムニーズに来ることができます。たくさんの親たちが子どもをグリーンチムニーズに行かせたいと考えていますが、どの子どもでもグリーンチムニーズに来られるわけではありません。

P:現在子どもは何人いますか?

J:定員200人に限っています。最高でも206人までしか受け入れません。そのうち約100人の子どもは通い、102人が居住型でグリーンチムニーズに住んでいます。

P:グリーンチムニーズに入れる子どもはどのようにして選ばれるのでしょう?

J:まず各学区の委員会(特殊教育委員会でメンバーは医師、行政担当官、あるいは教師など)がどういった対処が必要な子どもなのかを、症例ごとに検討します。予算が十分あるかどうか、その学区の予算に応じて一人当たりの子どもにどのくらい割けるのか、費用も考えた上で決めていきます。本当にケアや治療にかかる費用は高くなります。ですから深くよく考えて、その子どもをグリーンチムニーズに送るかどうか承認を与えるわけです。
多くの親はどうしてもグリーンチムニーズに入れたがるので、地区の委員会などを説得して自分の子どもを入学できるように頑張ります。地区の教育の当局とグリーンチムニー側もいろいろ協力しています。特に従来の学校では与えられないケアをグリーンチムニーズで与えることができるので、両者は協力しながらやっています。また、州政府もとてもグリーンチムニーズに協力的です。我々がもたらす価値というのを州政府はよく認識しているので、施設を拡充するための費用や資金調達をしています。

P:行政等の対応も素晴らしいと思います。たいへん恵まれた施設で、グリーンチムニーズに入ることができた子どもたちは本当に幸せですね。

グリーンチムニーズJ:確かに問題を抱えているということは、本当に残念なことですし、我々のような施設に来なければならないこと自体非常に不幸ですけれども、我々の学校に受け入れられた子どもは確かに幸運だと思います。特に障害児のいる親というのは本当に大変です。子どもを愛しているし、子どもに最善のことをしてやりたいと望み、そして子どもが将来どうなるのか本当に心配しています。そういった子どもを引き受けた我々はその子どもが将来成功できるように、最善の機会を与えるようにしています。もちろん彼らの可能性や機会は制約があるかもしれません。しかし、我々は最善の機会を与えています。

P:スタッフは現在、何人いますか?

J:グリーンチムニーズは合計500人くらいのスタッフがいます。居住型の治療センターや施設の他にコネチカットにも分局などの施設がありますし、ニューヨーク市でもいろいろな活動をしています。また、地域社会に根ざしたサービス提供、在宅サービスなども提供していますので、500人のスタッフが必要です。

グリーンチムニーズP:生徒200人に対してスタッフは500人とは、本当に恵まれた環境ですね。おどろきました。医師や精神科医は何名いますか?

J:基本的に精神科医は4人です。主に、精神科医は薬理学的な介入ができるように、医学的な側面に注意を払ってやっています。その他に臨床の博士号を持った精神科、まあ心理学者が3人います。その他に学校で精神面を見る担当者や、Ph.Dのインターンの人も2人います。それから、臨床的な部分で非常に手厚く人を雇っています。他の施設と比べるとこれだけ人がそろっているところはないくらいです。
また臨床的ないろんな資格を持った専門家が沢山います。教師もいます。その他にソーシャルワーカーもいます。特に精神病棟で危機的な状態で入院をしていた子どもたちは投薬を受けているので、薬に頼らないですむように我々の施設に来た時には、我々の仕事として抗精神薬などの薬からリタッチ出来るようなお手伝いもすることが大事なので、そのために精神科医がちゃんと配備されているわけです。

P:1日の授業時間はどれくらいですか?

J:州の規則によって子どもたちは1日5.5時間以上の授業をクラスで受けています。その他にもいろいろな活動を行っています。

P:動物たちはどのくらいの種類が何匹くらいいるのでしょう?

グリーンチムニーズJ:まず野生生物というセクターがあって、主として猛禽類を飼っています。コンドルとかワシとか鷹の種類、特にいろいろな種類の鷹がいます。アフリカンラプターという猛禽類もいます。猛禽類に非常に力を入れている点が特徴です。
一部にハンディキャップを負った動物がいますので、そういった鳥を園内で繁殖して、増やして育てたりします。 また、22頭の馬がいます。グリーンチムニーズの馬関連のプログラムは非常に有名で、強力です。それから、家畜もいろいろ飼っています。牛や、リャマ、ヤギに羊、豚がいます。鶏にウサギ、それから魚もいまして、水槽、水族館がいっぱいあります。もちろん犬猫もいます。
もうひとつ、我々は“人と動物の絆”に力を入れていますが、動物ではなく、園芸にも力を入れていて、有機農場があります。花畑もやっています。園芸と動物というのは同等に大事なものだと考えて力を入れています。

P:動物の世話をするのは、1対1?それとも、みんなで育てるのですか?

J:色々なメンテナンスが必要ですので、動物の世話というのは一人では出来ません。インターンもかかわるし、職員も世話しますし、子どもたちも世話します。ただ、子どもたちの中には自分の気に入った動物に力を入れて集中してやるという傾向は見られます。授業がかなりぎっしりあるので、勉強も忙しい、園芸活動、動物の世話もあるので、みんなで協力をして一緒に動物の世話をしています。
ただアメリカ4Hというクラブ活動があって、その時には1人1匹ずつ動物の世話をして、展示して見せたり、品評会みたいなものをやったりします。その他ボランティア活動として、農場のガイドをやることもあって、その時には、子どもたちが動物の世話に集中して、決まった動物を世話をすることもあります。
ただ、ほっとくと学校の勉強とか、他のぎっしりあるカリキュラムをやらないで一日動物といたいと言うような子どもも出てきてしまうので、それは出来ないようになっています。

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●グリーンチムニーズインターンについて

グリーンチムニーズP:グリーン・チムニーズのインターンシップについてお聞きしたいと思います。インターンシップ・プログラムはたいへん人気があり世界中からたくさんの参加者があると伺っています。

J:インターンはお互いにメリットがあると思います。われわれもインターンのおかげでとても助かりますし、インターンの人達も我々からたくさんのことを学べると思います。インターンの人達はそこで治療の全体のプロセスを学ぶ体験ができ、たくさんの子どもたちと知り合うことができます。ソーシャルワーカーになるとか、教師になるとか、医者になる人も多いのですが、将来プロの仕事に就くときに、子どもとの体験、動物との体験がより優れたプロフェッショナル、専門家になるために役立つはずです。
グリーンチムニーズには常時、8人から10人くらいのインターンがいまして、通勤してきてもらうか施設で住み込みで働いてもらいます。安全な良い農場を経営するのはお金がかかり、人件費もかかるので、そういった意味でもインターンが来てくれるのは我々にとってもメリットがあります。インターンになる資格ですが、通常大卒で20~21歳くらいで期間は4ヶ月から6ヵ月間です。人によっては1ヶ月もしくは、1年居たいと言う人もいるのですが、最低そのくらいは滞在できる事が条件です。彼らに住む部屋と施設を提供して賃金をお支払いしています。インターンの人達は、そこで体験することで、非常に厳しい労働に従事しますが、生涯の友を作るようなそれだけ素晴らしい体験をしてくれるので、もし今私が若かったら、一生に一度インターン体験をしたいなと思うぐらいです。

P:今回のシンポジウムでもインターンシッププログラムのお話がありましたが、参加者の多くがインターンシップにとても興味を持たれていました。

J:日本のインターンの方がたくさんいらして、本当に成功しています。動物と子どもと触れ合う事が、日本の文化や、人柄に合っているのかも知れません。世界各国からたくさんのインターンの方が来ますが、私たちのプログラムに日本の方がいちばんぴったりされているように思います。

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●ペットと暮らす上でのアドバイス

P:それでは最後にグリーン・チムニーズでの人と動物たちとの共存を通じて、私たちが生活の中でペットと暮らす上で大切なことについてアドバイスをいただけますか。

J:やはり動物がきちんとケアされていることを絶対に保障しなければいけません。そうでなければ、動物は誤った行動をとることになります。つまり食事や世話、安全が確保されていないと特に肉食動物などは誤った行動をとります。ですから、例えば生活環境に適さない犬を狭いアパートなどで飼育し、散歩もさせないでいると家の中で破壊したり、悪い子になるわけですが、きちっとしていれば良い行動、良い動物になって、動物は愛情で返してくれると思います。グリーンチムニーズに子どもを連れて最初に親が来た時は、まず一緒に農場を歩いてもらって、どれだけ動物が大事にきちんとケアを受けているかを親にも見てもらいます。そうすると、自分の娘や息子を預けても安心だなと思っていただけるのです。

グリーン・チムニーズで行われていることから私たちはたくさんのことを学び、また日常でのペットとの生活や関係についてあらためて考える機会を与えてくれました。先生、ありがとうございました。

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